ゾッとしたけど、助かった話。
私は新宿から私鉄で一時間ほどのところに住んでいます。その日は連続していた残業が終わり、土曜日の休日出勤という事もあって、同僚と深夜まで飲んで、帰りは終電になってしまいました。
ここ数日、最終バスにも乗れずタクシー帰りが続いていて、いつもはけっこうタクシー待ちの列が並んでいるのですが、今日は土曜ということもあってか、中年の女性が一人立っているだけ。
ホッとしてタクシー乗り場へ向かおうとすると、階段を駆け降りてくる足音が聞こえ、私を追い越してサラリーマン風の男が中年女性の後ろに並んでしまいました。
少しムッとしましたが、ほどなくやってきたタクシーで中年女性が行ってしまったので、人気もないところで男の人に文句を言う勇気もなく、待つ間に家に連絡を入れました。15分ほどして、やって来たタクシーにサラリーマンが乗り込んでいきました。
なんとはなしにタクシーを見送っていると、さっき中年女性が乗っていったのと同じ車に見えました。
「まさか、休日だから1台しかいないとか…?」その予感は的中したようで、さらに20分程経つと、やはりさっきと同じタクシーがやってきました。
ともあれようやく帰れます。私はタクシーに乗り、「○○町の××重機へお願いします」と、自宅近くの、目印になる建設機械置き場を告げました。自宅は車が入りづらいところなので、いつもそこで降りて歩くんです。といっても、ほんの数十メートル程度ですが。
運転手さんは愛想のいいおじさんでした。
「お仕事、大変ですなぁ。夜勤か何かで?」
「ええ、まあ」
疲れていたのもあって、私は適当に相槌を打つ程度でした。
建設機械置き場に近づいたので、財布からタクシー代を出そうとしていると、運転手さんが聞いてきました。
「お客さん、××重機の人?」「いいえ。違いますよ」そう答えると、何とタクシーは建設機械置き場を通過。
私は驚いて、「運転手さん、ここで良いですよ!」と言いますが、タクシーは止まりません。そのまま数分走り続け、コンビニの駐車場でようやく停まりました。
「ちょっと、何なんですか!?」
「ごめんなさいね、お客さん。でも、ちょっとね…お客さん、火曜日にも乗ったでしょ?」
「ええ、それが何か?」
運転手は名刺を取り出し、苦情が有れば私の名前を言って電話して構わないから、と前置きして言いました。
火曜日に乗ったのもこのタクシーで、運転手さんはそのときにも××重機で降ろしたことを覚えていたそうです。
「実は、お客さんの前に、男を乗せたんだけどね」「はあ…」頭に、駅で私を追い越して行ったサラリーマンが浮かびました。
「その男がね、××重機で降りたんですよ。それも…」タクシーの中で、男は誰かに電話しながら「もうすぐ着く」とか「何分後だ」などと話していたのだといいます。
「それが何なんですか?」「いやね、××重機は電気も点いていないし、社員じゃないでしょう?だから多分あそこから歩いて帰るんだろうと思ってね…」
さっき××重機に差し掛かったとき、降りるのとは反対側にワンボックスが一台停まっていたのに気が付いたのだそう。
「4人くらい乗ってたかなぁ。それがライトが当たるとね、サッと隠れたんだよ。あやしいでしょう。しかも運転席に居たのは間違いなくあの男だったからね。何かあるんじゃないかって、気になってねえ」
ゾッとしました。男の後ろに並んでいるとき、私は家にこんな電話していたんです…
「今、駅に着いたところ。××重機までタクシーに乗るから…」
私は新宿から私鉄で一時間ほどのところに住んでいます。その日は連続していた残業が終わり、土曜日の休日出勤という事もあって、同僚と深夜まで飲んで、帰りは終電になってしまいました。
ここ数日、最終バスにも乗れずタクシー帰りが続いていて、いつもはけっこうタクシー待ちの列が並んでいるのですが、今日は土曜ということもあってか、中年の女性が一人立っているだけ。
ホッとしてタクシー乗り場へ向かおうとすると、階段を駆け降りてくる足音が聞こえ、私を追い越してサラリーマン風の男が中年女性の後ろに並んでしまいました。
少しムッとしましたが、ほどなくやってきたタクシーで中年女性が行ってしまったので、人気もないところで男の人に文句を言う勇気もなく、待つ間に家に連絡を入れました。15分ほどして、やって来たタクシーにサラリーマンが乗り込んでいきました。
なんとはなしにタクシーを見送っていると、さっき中年女性が乗っていったのと同じ車に見えました。
「まさか、休日だから1台しかいないとか…?」その予感は的中したようで、さらに20分程経つと、やはりさっきと同じタクシーがやってきました。
ともあれようやく帰れます。私はタクシーに乗り、「○○町の××重機へお願いします」と、自宅近くの、目印になる建設機械置き場を告げました。自宅は車が入りづらいところなので、いつもそこで降りて歩くんです。といっても、ほんの数十メートル程度ですが。
運転手さんは愛想のいいおじさんでした。
「お仕事、大変ですなぁ。夜勤か何かで?」
「ええ、まあ」
疲れていたのもあって、私は適当に相槌を打つ程度でした。
建設機械置き場に近づいたので、財布からタクシー代を出そうとしていると、運転手さんが聞いてきました。
「お客さん、××重機の人?」「いいえ。違いますよ」そう答えると、何とタクシーは建設機械置き場を通過。
私は驚いて、「運転手さん、ここで良いですよ!」と言いますが、タクシーは止まりません。そのまま数分走り続け、コンビニの駐車場でようやく停まりました。
「ちょっと、何なんですか!?」
「ごめんなさいね、お客さん。でも、ちょっとね…お客さん、火曜日にも乗ったでしょ?」
「ええ、それが何か?」
運転手は名刺を取り出し、苦情が有れば私の名前を言って電話して構わないから、と前置きして言いました。
火曜日に乗ったのもこのタクシーで、運転手さんはそのときにも××重機で降ろしたことを覚えていたそうです。
「実は、お客さんの前に、男を乗せたんだけどね」「はあ…」頭に、駅で私を追い越して行ったサラリーマンが浮かびました。
「その男がね、××重機で降りたんですよ。それも…」タクシーの中で、男は誰かに電話しながら「もうすぐ着く」とか「何分後だ」などと話していたのだといいます。
「それが何なんですか?」「いやね、××重機は電気も点いていないし、社員じゃないでしょう?だから多分あそこから歩いて帰るんだろうと思ってね…」
さっき××重機に差し掛かったとき、降りるのとは反対側にワンボックスが一台停まっていたのに気が付いたのだそう。
「4人くらい乗ってたかなぁ。それがライトが当たるとね、サッと隠れたんだよ。あやしいでしょう。しかも運転席に居たのは間違いなくあの男だったからね。何かあるんじゃないかって、気になってねえ」
ゾッとしました。男の後ろに並んでいるとき、私は家にこんな電話していたんです…
「今、駅に着いたところ。××重機までタクシーに乗るから…」
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