俺さ、生きてる虫は大丈夫なんだけど、虫の死体見ると怖気が立つんですよ。ずっと何でだろうなって不思議だったんだけど、ふと思い出したんで語らせてください。

ちっちゃい頃、一緒に遊んでた女の子がいたんですよ。ひとつ年下で他に似たような年代の子がいなかったから、いつも一緒で、家にもよく行っていました。


ある夏の日、彼女の家で遊んでたときのこと。

「おやつよー。俺くんも一緒に食べなさい」って彼女の母親の声。俺たちは居間に行きました。

…かなり気持ち悪い話なんで、気が弱い人はここでやめてくれた方がいいですよ。

出てきたのは、大皿に山盛り数十匹の茹でたカブトムシ。今でも思い出す度に吐き気がこみ上げてくるんだけど、彼女は満面の笑みで、慣れた手つきでスプーンで腹の部分をこじ開けて中身を掬って食べてるんですよ。俺は本当に気味が悪くて、全力で走って逃げましたね。

蜂の子くらいなら俺も経験あります。だから虫食文化を否定する気はないけど、アレは無いわ…

話によると、セミも普通に唐揚げで食べてたんだとか。ちなみにその子、中学の頃に県の陸上記録作ったほど足が早かったから、ひょっとするとそのせいかもしれないですね(笑)。

…笑い話にしないとやってられませんわ。