配達屋の仕事してます。ショッピングセンターに食品とか運ぶ仕事です。

裏方の仕事だからなのか、表ではニコニコしてる従業員の人も、我々には結構冷たいんですよ。邪魔者扱いというか、とにかく下に見られてて、存在自体が無視られる感じです。


そんな中、すれ違う人なら社長だろうが客だろうが警官だろうが愛想の良い子がいたんです。誰にでも同じ笑顔でいつも挨拶してくれる○○ショップの販売員の子です。

モデルみたいにスラッとしてて、童顔で可愛いおっとりした感じの女性。自分にも必ずほにゃーっとした笑顔で「お疲れさまでーす」って声をかけてくれて。その子のいるショッピングセンターに納品に行くのが密かな楽しみでした。

ところが、年初めからその子の店とかで万引きが多発しいつようです。その子と店の店長と警備員が、バックヤードで警察と何やら話してました。俺にまで話が漏れ伝わってくるくらい酷い被害で、相当怒っているみたいでした。

いつもと変わらないおっとりした表情と少し舌っ足らずな喋り方でしたけど…。
「ちょっと刺すだけなら大丈夫ですよ。大げさですねぇ」
「わたしは割りに合わないからやりません」
「奴らなんか、人間として再起不能にしても物足りませんけどねぇ」

そう言っていたんです。すごいギャップで衝撃的。もうドン引きです。一緒に話してた人も皆ビックリした顔のまま固まってたし。

当の本人は「窃盗なんてやーねぇ」みたいな感じでしたけど。言ってる内容が尋常じゃありませんでした。自分の恋心が砕け散った感じです。

割りに合えばやっちゃいそうな、異様な雰囲気を感じました。耳から彼女の声がこびりついて離れませんよ。