我が家は田舎で鍵をかける習慣がありません。近所の人もインターホンなんて使わず「いるー?」ってドアあけてきます。

そんなある日、家事も終わり、のんびりテレビを見ていたら、ふと後ろに人の気配を感じました。慌てて振り向くと知らないおばさんが立っています。その手には包丁とロープが…。

「奥さんはどこ?」

震える声でおばさんが言います。私もビビッてます。「奥さんは私」なんて口が裂けても言えません。

で、気がついたのです。うちは義父から家を借りているので、名義は義父のものになっています。なので、よく義父の家と間違えた人がやってきます。どうやらおばさんも間違えたみたい。

おばさんの手は震えていました。私は近くにあった座布団を盾に突進しました。尻餅をつくおばさんに、馬乗りになり顔面を殴り続ける私。隙をみて応戦するおばさん。もうカオスです。包丁飛んでるし。

そうこうして、おばさんが根をあげたところで、やっとロープとガムテープでぐるぐる巻きにするのに成功しました。自営業で働いている旦那に電話をかけると、10分ほどして旦那が義父と連れ立って到着。義父はおばさんを見て絶句していました。

愛人だったのです。

その後は警察沙汰にはしないで義父が持ち帰りました。でも、嫁にまで迷惑かけた!と旦那と義母が怒り狂い、結局、義父は追い出されてしまいました。

社長でもなくなった義父が今何をしているのかは知りません。自慢のベンツも売り払われ、財産も義母に名義変更されてしまいましたし。