予備校であったストーカーの話です。

浪人時代に同じ予備校の人につきまとわれました。
全く身に覚えがないのに、その人の頭の中で、いつの間にか彼女にされてしまったのです。

「彼」と高校時代に同級生だったA君がたまたま私の友人となり、同じ予備校にいました。

ある日の授業でたまたま隣に「彼」が座ったのが全ての始まりだったようです。
「あの時、彼女はオレ目当てで近寄ってきたんだ」と「彼」はA君に話していたようです。
もちろん、「彼」とは喋ったこともなく、名前も顔も知りません。

その数週間後、とある授業で見知らぬ男が私の隣に座ってきました。
それが「彼」でした。
「ここ、座るよ」と妙に無表情で視線が泳いでいたので、顔を憶えてしまいました。
授業中、雨が降り出したら「傘、貸そうか」と突然話し掛けてきます。
当然、聞こえない振りをしましたが…。
口調が妙に馴れ馴れしく、まるで既に知り合いのような「当然」といった態度が無気味で「浪人中に精神を病んだ人かな」と印象に残ったのです。

しかし、その後しばらくは何ごともなく過ごしていました。もちろん、「彼」とは話すことはおろか、見かけた覚えさえありませんでした。

そんなある日。

午前の授業が終わり、食堂へ行こうと教室の混み合った出口付近で立っていると、突然、すぐ前に立っていた男が振り返り、私に向かってこう言いました。

「今日は外で食べようか?」
「ね?XXさん」

「彼」でした。以前もまるで知り合いみたいな口調で隣に座ってきた「彼」…。
その瞬間、恐怖心から、全身の力が抜けていくのがわかっりましたが、気付かない振りをしてその場は立ち去りました。

怖くなった私はA君にこの話をしました。
するとA君は意外な返事を返してきます。

「え?つき合ってないの?」

「彼」と、A君は以前からの知り合いでした。
そして「彼」から
「彼女から告白された。でも彼女は恥ずかしがりやだから秘密なんだ」
そう訊かされたようです。

かかわり合いになりたくないので今後は無視することに決めました。


しかし、その後、授業では黙って隣に座ろうとするし、食堂では黙って当然のように傍に座ってきます。

朝、電車に乗ろうとしたら到着した電車の目の前のドアに「彼」が乗って待っています。
電車の中ではただ黙って傍に寄って立ち、逃げても終止無言でついてきました。

帰りに後をつけられ、母親の勤務先に電話して自宅の電話番号を聞き出そうとまでします。

その間、私は無視し、近寄られる度に「迷惑なので関わらないで」と一言だけ言うことは根気強く続けました。

しかし、「彼」の妄想はエスカレートする一方。

「彼女は恥ずかしがっている。」
「一緒の大学を受けるので受かったらつき合ってくれると返事をしてくれた」

そうA君に一方的に自慢していたそうです。
A君も「彼」が怖くなったらしく、反論する勇気が出なかったと言います。

そうしているうちに、センター試験の直前頃からぴたりと付きまとわれることがなくなりました。
不思議に思いましたが、お互い受験生ですから、さすがに正気に戻ったのか、とすこしホッとしていました。


受験当日。

「彼」は国立のA大学志望、私は国立のB大学志望。
当然、同じ試験日に私がA大学を受けるはずはありません。
たまたまA君はヤツと同じA大学を受験していました。
試験当日、慌てふためいた様子の「彼」にA君は肩を叩かれたといいます。
「XXさんは?XXさんは何でいないんだ!?」と怒鳴ってきたそうです。

A君は吃驚して「彼女はB大学を受けているのではないか」と答えたところ…。

「あの女!騙しやがったな!!殺してやる!!!」

血走った目つきでそう叫ぶと試験場を出ていったそうです。
試験当日の夜、A君から電話があり、この話を聞いた時は恐怖しました。